2015-01-01から1年間の記事一覧

Michael Loux"Metaphysics:A Contemporary Introduction"(&おまけのひとりごと)

「Metaphysics: A Contemporary Introduction (Routledge Contemporary Introductions to Philosophy)」 その分野の第一人者がカテゴリー論の視点から分析的形而上学を概観した優れた教科書 世界の根本の構造を問う哲学としての形而上学における(分析的な)議…

汎心論の哲学史をほんの少しだけ調べてみた

この前チャーマーズの汎心論概論の論文を紹介したけれど、チャーマーズ自身が現代の哲学で主流であるはずの唯物論(物理主義)を見限って、汎心論と(実体)二元論に見込みがあると言っているのに驚いた。唯物論(物理主義)を捨て去ろうとするのは意識のハードプ…

最近までの道徳についての哲学的・科学的な議論をまとめた最良の一般書「太った男を殺しますか?」

「太った男を殺しますか? (atプラス叢書11)」は、有名になったサンデルの授業でも取り上げられていたトロリー問題(トロッコ問題)を主題にしながら、最近までの道徳に関する学問的議論(哲学や科学)をまとめた一般向けの著作としてよく出来ている。近年の道徳…

社会的認知についての一般書「心の中のブラインドスポット」の紹介

社会的認知とは、社会心理学に認知心理学的な考え方を適用した研究領域であり、色々と面白い研究成果もあるのだが、残念ながら日本ではあまり知られていない。そのことについては以前から懸念を抱いていたのだが、社会的認知についての一般書「心の中のブラ…

チャーマーズの論文を読んで現代的な汎心論を自分なりにまとめる

私は長らく心の哲学に関心を持ってきたが、元々の問題意識(認知科学の科学性への疑問)がそれなりに解消したのと、最近の哲学者の多くが素朴な科学主義に陥っているように見えること*1などから最近は心の哲学への興味が失われていっていた。それがたまたまネ…

スザンヌ・コーキン「ぼくは物覚えが悪い」(修正前のくどい書評とおまけの追記)

「ぼくは物覚えが悪い:健忘症患者H・Mの生涯」 世界一有名な健忘症患者H.Mについて、当の研究者がその人柄を交えながらその研究成果を紹介していく記憶の科学書の傑作 ロボトミー手術によって新しいことを一切覚えられなくなってしまったH.M(ヘンリー)をめぐ…