2017-01-01から1年間の記事一覧

強化学習は教師あり学習/教師なし学習の対と同等の機械学習の分類なのか?

ネットで強化学習について調べていて、(私に判断できない技術的な説明は脇に置くと)いくつかのサイトにあった強化学習そのものについての説明を読んで違和感を感じてしまった。 強化学習そのものについての知識は、認知科学について勉強してコネクショニズム…

お蔵入り寸前のお気に入りミステリーのリスト

注:ブログでお気に入りミステリーのリストを作る!と公言してからこれを書き始めたのだが、リストの個々の作品へのコメントを書かなくちゃ〜と思っているうちに時間が過ぎてしまい、お蔵入りになっていた記事。もったいないのでこのまま出します。 21世紀…

TBSラジオ「フロッグマン・ショー AI共存ラジオ」で人工知能の歴史を聴く(そしてヒヤヒヤする)

最近はTBSラジオで夜にやっている「フロッグマン・ショー」が人工知能をテーマした番組で、毎回楽しみに聞いている。いつもどうりガ番組を聞いていたら、10/25(水)の特集で人工知能の歴史が扱われていた。講師が専門家でなくサイトを運営するほぼ素人なとこ…

思弁的実在論者ハーマンの哲学を私的に読み込む

いつものように何となくネットを漁っていたら、グレアム・ハーマン「オブジェクト指向哲学の76テーゼ」なる哲学的文書の翻訳を見つけた。グレアム・ハーマンは思弁的実在論で有名な哲学者の一人であり、私はそれほど期待もせず読み始めた。すると、その内容…

経験的研究と理論的研究の生産的循環としての研究プログラム

私は最近、進化心理学にとってモジュール論はいらない!という文章を書こうとして、ネットで手に入れた関連した論文を読んでいる。私が思いつくようなアイデアなんて大して独創的な訳もなく、実際に似たアイデアを提示した論文はなくもなかった。とはいえ、…

短期記憶の容量は七から四に書き換えられたのか?

少し前に、当時出版されたばかりの日本の心理学者の書いた一般向けの本を眺めていたら、短期記憶の容量として有名な7(±2)は今や間違っていて4(±1)が正しいと書いてあった(ネット上の論文では「前頭前野とワーキングメモリ」に同様の記述がある)。短期記…

トップダウン効果は本当に知覚を変えているのか?

モジュールのカプセル化に関する議論 哲学者が科学的成果に則って論文を書くことは近年になって増えてきたが、たまたま見つけた「Opening Up Vision:The Case Against Encapsulation」(PDF)もそんな論文の一つだった。内容はフォーダーのモジュール論の特徴…

「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」を読む

最近は気が向いて、ネットに上がっている認知科学関連の論文を読むことが多くなった。その中で、たまたまある学者が関わっていた論文を読んだら面白かった。それは「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」(pdf)だ。基本的に神経科学…

心の計算理論におけるマーの三つのレベルについて少しだけ

認知の計算モデルについて調べていていたら、日本のサイトでとてもよいリンク集サイトを見つけた。それは「私のブックマーク計算論的認知科学 第1版」であり、基本的にお勧めなのだが、実は最初にこれに目を通した時になんとなく違和感があった。それがはっ…

解釈主義は機能主義に反しているのか?

具体的な書名はあえて挙げないがある日本の学者の書いた本の中で、解釈主義は行動主義なのであって機能主義には反しているという主旨の記述を見たことがある。残念ながらこれは完全なる間違いである。おそらくその学者は代表的な解釈主義者であるデネットが…

フォーダーとピシリンの共著「Minds without Meanings」(出版済み)の草稿を読む

ネットで調べ物をしていてある論文を読んでいたら、数年前にフォーダーがピシリンとの共著「Minds without Meanings」を出していたのを知ったのでさらに調べてみたら、その更に数年前に書かれたその本の草稿が見つかったので大雑把に目を通してみた。第二章…

認知の計算モデルは本当に流行っているのか?

少し前にネットで調べ物をしていたら、新しい認知科学のハンドブックが出たと分かって喜んで内容を調べてみた。こちらのオックスフォード認知科学ハンドブックの紹介記事(PDF)を見てもらえば分かるが、古典的な従来の研究テーマに一通り触れられているのは当…

法学者サンスティーンが参照する科学的心理学の成果を確認する

法学者サンスティーンは科学的心理学の成果に基づいた議論で著名な学者であるが、欧米での評価の割には日本ではそこまで知られていない学者でもある。 比較的最近の話題だと行動経済学者セイラーとの共著「ナッジ」(邦題「実践 行動経済学」)が有名があるが…

身体化論について私感

「エナクティヴ・アプローチにおける現象学の役割は何か」は、ヴァレラらの提唱したエナクティヴ・アプローチをリサーチ・プログラム(ラカトシュ)として理解しようとした素晴らしい論文でお勧めです。詳しい内容は論文を読んでもらうとして、後は身体化論に…

生態学的妥当性を軽く復習する

「理性の起源: 賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ (河出ブックス 101)」は、現在の日本での認知科学への理解の低さを考えるとよく出来た本である*1。その中に「生態学的」の意味は「実験室の外で」あるとしているが、この用語の用法のオリジナルとなる文献…

方法論的自然主義について個人的なアイデアをつぶやく

前回の記事で、前々から気にかかっていた近年の方法論的自然主義について書けたのはよかったが、固めの内容ばかり抑えたのでもともと持っていたアイデアの殆どを使えなかった上に文章そのものが固くなってしまった。せいぜい方法論的自然主義というと実験哲…

近年の哲学での方法論的自然主義の隆盛は明らかなのに日本ではあまり知られてないよねぇ

自然主義とは何か?その二類型 自然主義について詳しくは哲学者パピノーによる「SEPのNaturalismの項目(英語)」がお勧めなんので是非参照してもらいたい。論者によっては用法がかなり異なるので定義するのは難しいが、主要な用法としては存在論的自然主義と…

既に今年の日本のミステリーのベストかも、太田愛「天上の葦」

最近は日本のミステリーを読むことが多く、特に21世紀に入ってからの日本のミステリーは海外ミステリーと比較しても日本の他ジャンルと比較しても、そのレベルの高さに驚かされている。そのうち、21世紀の日本のミステリーのお気に入りリストでも作ろう…

いろいろ愚痴を言いながらも近年見られた新しい進歩史観だけは指摘しておく

前回の記事でも取り上げた「いま世界の哲学者が考えていること」は、近年の日本の出版状況を考えれば良作の部類には入るのだろうが、やはり不満は多い。前回の記事の注でも指摘したが本来の哲学の話は最初の方にしかない。その哲学の話に関しても、自然主義…

マルクス・ガブリエルはどんな存在でも認める都合のいい欲張り存在論者か?

去年に「いま世界の哲学者が考えていること」を読んで興味を持ったマルクス・ガブリエルについて記事に書こうとはずっとしていたのだが、ネットで調べて考えた結果として私にはそれほど興味が持てなくなり書く気が失せていた。以前までかろうじて持っていた…