2022-01-01から1年間の記事一覧

書評 サイモン・バロン=コーエン「ザ・パターン・シーカー」

「ザ・パターン・シーカー:自閉症がいかに人類の発明を促したか」 著名な自閉症の研究者が、共感と対照をなすシステム化の視点から人の心について論じた著作。ただし、内容が著者の専門に近い章は良質だが、心の進化にまで手を広げて大風呂敷を広げた章は無…

ベイズ脳は認知バイアスを説明できるのか?

認知科学でもここずっと話題となり続けている自由エネルギー原理(予測処理)1は、自らを脳や心のための統一理論であると称している。これまでの理論と比べての扱える適用範囲の広さを考えると、こういう主張をしたくなる気持ちも分からなくもない。 統一理論…

ディスクレシア(読み書き障害)から考える人類進化の謎

しばらくここに記事をあげてないが、ブログに書きたいことはなくもなかった。 例えばハイエクとニューラルネットワークの記事を書くつもりで、めぼしい論文からの引用まではした。感覚秩序の話だけ書いても物足りないのでその先も書こうと計画だけはしたが、…

書評 ファニーハフ「おしゃべりな脳の研究」

「おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考」 人の内なる声について、科学的成果を交えながら、それを研究する心理学者が分かりやすく伝えてくれる著作 内言や聴声について、専門に研究してる心理学者が、科学的な成果や様々な文献を参照ながら、一般…

自由エネルギー原理の予測処理的な大枠を自分なりに理解してみる

自由エネルギー原理については、このブログでは既に何度か批判的な議論を紹介している。フリストンブランケットやメカニズムとの関係についてはすでに記事をあげたが、私自身の自由エネルギー原理への印象は相変わらず良くならない。他に気にしてる話題がな…

人工知能は知覚の逆問題を解いたのか?

正直なところ、今の人工知能なんて驚異的な統計装置かもしれないけど所詮は生きた心とは似ていない…と最近は高をくくっていた。でも、次の記事を読んだときはマジかもしれないと思い始めた NeRFの仕組みがどんなものかいまいち分からないのでまだ評価しがた…

自由エネルギー原理とラカン理論を(マルクスを介して)比較する

そのうち自由エネルギー原理(または予測処理理論)について自分で説明したいとは思っていた。前々から、自由エネルギー原理とラカンの三界論(象徴界・想像界・現実界)には共通点があることには気づいていたので、それをテコにして説明しようと色々と調べては…

認知科学における計算主義を方法論的な視点から擁護してみる

自分は二十数年前の学生時代に(科学としての)認知科学に魅了されて今に至るのだが、その中で認知科学への無理解な批判には何度も会っている。認知科学を一時の流行とか過去の遺物とか言ってた奴らは、欧米の事情を知らないただの無知なので付き合うだけ時間…