哲学

反表象主義を思弁的実在論の視点から説明してみる〈後編〉

前編からの続き 反表象主義の主張をあらためて確認する まずは、反表象主義の中心的な主張である「内容の難しい問題」(hard problem of content)を説明した、前回に翻訳した部分をもう一度引用します。 心は本質的に内容を持つ訳ではない、なぜなら内容を伴…

反表象主義を思弁的実在論の視点から説明してみる〈前編〉

認知科学における一立場である反表象主義については、このブログでも折りに触れて軽くは言及してきた。しかし、反表象主義について独立した記事を書くのはずっと躊躇してきた。 それは、私が反表象主義に批判的なのに日本では反表象主義がほとんど知られてい…

2010年代に私が感激した認知科学の哲学論文BEST3

もう2019年も終わるということで、2019年の認知科学を振り返ろうとする記事を書く計画は立ててみた。しかし、去年までの人工知能ブームが収まった今年は特にこれといった特徴を思いつくこともない。もしかしたらあったかもしれないが私には分からない。predc…

解釈主義は機能主義に反しているのか?

具体的な書名はあえて挙げないがある日本の学者の書いた本の中で、解釈主義は行動主義なのであって機能主義には反しているという主旨の記述を見たことがある。残念ながらこれは完全なる間違いである。おそらくその学者は代表的な解釈主義者であるデネットが…

近年の哲学での方法論的自然主義の隆盛は明らかなのに日本ではあまり知られてないよねぇ

自然主義とは何か?その二類型 自然主義について詳しくは哲学者パピノーによる「SEPのNaturalismの項目(英語)」がお勧めなんので是非参照してもらいたい。論者によっては用法がかなり異なるので定義するのは難しいが、主要な用法としては存在論的自然主義と…

マルクス・ガブリエルはどんな存在でも認める都合のいい欲張り存在論者か?

去年に「いま世界の哲学者が考えていること」を読んで興味を持ったマルクス・ガブリエルについて記事に書こうとはずっとしていたのだが、ネットで調べて考えた結果として私にはそれほど興味が持てなくなり書く気が失せていた。以前までかろうじて持っていた…

汎心論の哲学史をほんの少しだけ調べてみた

この前チャーマーズの汎心論概論の論文を紹介したけれど、チャーマーズ自身が現代の哲学で主流であるはずの唯物論(物理主義)を見限って、汎心論と(実体)二元論に見込みがあると言っているのに驚いた。唯物論(物理主義)を捨て去ろうとするのは意識のハードプ…

チャーマーズの論文を読んで現代的な汎心論を自分なりにまとめる

私は長らく心の哲学に関心を持ってきたが、元々の問題意識(認知科学の科学性への疑問)がそれなりに解消したのと、最近の哲学者の多くが素朴な科学主義に陥っているように見えること*1などから最近は心の哲学への興味が失われていっていた。それがたまたまネ…

ブランダム「ヘーゲルにおけるプラグマティスト的主題」第一節を読む

「ネオ・プラグマティズムとは何か-ポスト分析哲学の新展開-」を読んで以来、ブランダムの哲学にすっかり興味を持ってしまった。アマゾンのレビューにも書いたように「ネオ・プラグマティズムとは何か」という本に対する私の評価は微妙(悪い本ではないが問…

認識論的な整合主義を擁護できる形に整えてみる

分析的な認識論にはよく議論される論点が幾つかあって、内在主義vs外在主義や基礎づけ主義vs整合主義といった説の対立が争点になる。これらの説の内で、内在主義の立場は外在主義以外の説と一緒にできるので、基礎づけ主義と外在主義と整合主義の三つが認識…

現代存在論についての徒然(トロープと基体説の巻)

「『現代存在論入門』のためのスケッチ(第三部)」はお勧めできる論文ですが… 倉田剛の「現代存在論入門」の草稿は既に第二部までは興味深く読ませてもらっていたけれど、第三部がネットで手に入るのをつい最近知って早速読んでみた。第三部の話題はトロープ…

ソータル(sortal)について自力で考えてみる(正確な定義は自分で調べましょう!)

ネット上でソータル(sortal)という用語を見かけることが何度かあって、自分はこれについて何も知らなかったのだが、書かれていることから何となく普遍に該当しなくて分類できるもの程度に認識していた。つい最近調べ物をしていたらスタンフォード哲学百科の…

非概念的内容から概念的内容を合理的に再構成してみる試み(ただしまだ途上)

マクダウェルは感覚データと非概念的内容を安易に同一視しているが、これ以外にもマクダウェルは都合のいい理解をしている所がある。例えばセラーズの有名な論文「経験論と心の哲学」の最終章の知覚の議論を思いっきり無視したご都合主義が伺える。ローティ…

感覚データと非概念的内容は同じなのか問題(または想像力は知覚と思考を結ぶのか?)

マクダウェルの哲学説に関しては前々から疑問に思っていたことがあった。私自身は感覚データと非概念的内容って違うんじゃないかと思っていたのだが、翻訳された「心と世界」を読んでもその疑問はあまり直接には解消されなかった。理由は簡単で「心と世界」…

翻訳されたマクダウェル「心と世界」の解説について(または二つの異なるrealism)

マクダウェルの主著である「心と世界」の日本語訳がやっと出版され、翻訳の出来も良好で喜ばしい限りである。この翻訳には神崎繁による力のこもった解説も付いていてとても参考になるのだが、残念なことに突っ込みどころのあるところが所々見られる。その中…