認知科学

「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」を読む

最近は気が向いて、ネットに上がっている認知科学関連の論文を読むことが多くなった。その中で、たまたまある学者が関わっていた論文を読んだら面白かった。それは「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」(pdf)だ。基本的に神経科学…

心の計算理論におけるマーの三つのレベルについて少しだけ

認知の計算モデルについて調べていていたら、日本のサイトでとてもよいリンク集サイトを見つけた。それは「私のブックマーク計算論的認知科学 第1版」であり、基本的にお勧めなのだが、実は最初にこれに目を通した時になんとなく違和感があった。それがはっ…

フォーダーとピシリンの共著「Minds without Meanings」(出版済み)の草稿を読む

ネットで調べ物をしていてある論文を読んでいたら、数年前にフォーダーがピシリンとの共著「Minds without Meanings」を出していたのを知ったのでさらに調べてみたら、その更に数年前に書かれたその本の草稿が見つかったので大雑把に目を通してみた。第二章…

法学者サンスティーンが参照する科学的心理学の成果を確認する

法学者サンスティーンは科学的心理学の成果に基づいた議論で著名な学者であるが、欧米での評価の割には日本ではそこまで知られていない学者でもある。 比較的最近の話題だと行動経済学者セイラーとの共著「ナッジ」(邦題「実践 行動経済学」)が有名があるが…

量子意思決定論に興奮してネットで調べてみる(そして匙を投げる)

私の数少ない愛読雑誌の日経サイエンスの最新号には、私のような認知科学好きにはヨダレのでるような記事が目白押しだったが、特に記事「パラドックスに合理あり | 日経サイエンス」には興奮してしまった。私ごときがその内容をうまく説明などできないので、…

方法論は各分野に内在、理論的には分野を超えて交流可能

認知科学(つまり認知的研究一般)が単なる一時的な流行を超えて今でも受け入れられている最大の理由は、具体的な研究の方法論は各専門分野に任せることによって研究分野の自律性を保ち、それでいて理論的には分野を超えてのコミュニケーションを可能にして…

J.J.ギブソンの刺激概念再考

J.J.ギブソンは論文集isbn:4326101539「心理学における刺激の概念」で刺激概念を考察している。そこで八つの論点を挙げている。以下の引用は全て翻訳から。 刺激は、個体を動機づけるのか、或いは、単なる反応のきっかけに過ぎないのか(p.278) 刺激は、反応…

なぜアンケート調査は認知科学の研究にはならないのか?

アンケート調査は認知科学の研究にはなりえない。アンケート調査と言っても、企業がよくやる消費者に適当な質問に答えてもらうようなものというよりも、心理学や社会学での尺度(例えば好きから嫌いまでの間を5段階に分けてそこから選ぶようなタイプの質問の…

認知科学に潜む近代哲学史

哲学史において成されたことは認知科学においても繰り返された、と言われることがある。哲学史と言ってもどこまでさかのぼるかなどで全然違うが、少なくともカント以降の主要な哲学の流れ(いわゆる近代的エピステーメー)が認知科学の中に含まれているのは…

認知科学の中間的な立場

私が感じる認知科学の魅力の一つは、その立場(パラダイム)の中間的なところにある。(認知科学がまだなかった)認知革命の真っ最中のころ、一方に当時の心理学で主流であった科学的厳密さの代償に意味を追放した行動主義があり、他方に人間性心理学のよう…

因果論的な機能主義を説明する

shokou5さんの質問に答えます。かなり大雑把な説明です。とはいえ、記事を書いたはいいけれど、はっきり言って分かりにくいです。理解できなくてもあまりがっくりされなくて平気です(こちらのせいです)。もちろん、私の理解が間違ってる場合もありますので…

日本の俗流クオリア論を撃破する

日本はクオリアなる言葉が一般にも知られている奇妙な国だが、しかしその一般的なクオリア理解はもともとの哲学的なクオリア理解とはあまりに異なっていてとてもおかしい。日本でクオリアなんて用語が流行ったのは、小泉旋風真っ只中のポピュリズム時代での…

ガレス・エヴァンスの哲学を調べる、または純粋な心の哲学?

アメリカの分析哲学者であった故ガレス・エヴァンスは知覚が非概念的内容を持つことを提唱したことで有名なのは知っていたが、そのじつ日本ではめぼしい紹介があまりなくネット上でも日本語の情報があまりなくて困っていたところで、次のリンクの論文をやっ…

現在の認知科学におけるいくつかの争点

Contemporary Debates in Cognitive Science ISBN:1405113057次から翻訳 はたして心はどのくらいモジュール的なのか? 言語の知識はどのくらい生得的なのか? 種としての人間が認知的に限界があるまたは非合理的であることを、認知科学は示したのか? 法則と…

メンタルモデルについて書いてみた

メンタルモデルはいくつ想定すればよいのか? http://blog.goo.ne.jp/woodywood/e/47010ceddba25b68da454562eb8eead0 ネット上で調べ物をしていたら、メンタルモデルについて書かれた記事を見つけた。そこに書かれていることに違和感を感じ、さらに検索して…

人間の言語とその進化について

人間だけが言語をもっていることの不思議 http://www.blwisdom.com/fseen/05/ 岡ノ谷一夫さんの鳥の歌の文法についての研究はテレビ(確か放送大学)で見たことがあったので知っていた(で、興味深い研究だと思った)。でも、ネット上にこんなにいい研究紹介…

心理学の危機再び、または学際分野としての認知科学の解体(素描)

注:あくまで素描なので、様々な知識を勝手に前提にして書いています。ようするに、ただでさえ書くのが厄介な内容なのに、その上に丁寧に説明するのは面倒(それでなくても、言及すべきなのに抜けてるところはいろいろありそう)。ご了承ください。 生理学的…

消去主義と解釈主義との違い、または政府転覆計画について

ときどきデネットを介して一緒くたにされてしまう消去主義と解釈主義との違いについて書こうと思うのだが、その話をする前に素朴心理学その他うんぬんを説明しなければならないという面倒くさい仕事が待っている。知識のない読者には悪いが、面倒なので大雑…

セラーズが示唆するもう一つの道

アメリカの哲学者セラーズは知覚の構造と言語の構造との違いを強調する。言語の構造と知覚の構造とが同じであるとするのは、論理実証主義などに代表される古典的な説である。ウィトゲンシュタインが「哲学探究」の最初でアウグスティヌスを引用しながら批判…

セラーズ「経験論と心の哲学」第3部「見える」の論理 を解説してみる

「赤がある」と「赤が見える」と*1はどちらが根底となる命題なのだろうか。伝統的な哲学の議論では「赤が見える」が根底であり、「赤がある」はそこに存在が付与されるものであるとされた。しかし、セラーズはこれを否定する。「赤がある」こそが根底であり…

心の哲学の説明を試しに書いてみました

ネット上で心の哲学について調べていて、日本のウィキペデアの記述のひどさに呆れ、そこからリンクされている日本語の論文の説明にまずさを感じた(認知科学と人工知能は別でしょ…とか)ので、自分で心の哲学の説明を書く気になった(ネット上でデネットを消…

認知科学への身体や環境の二つの導入のされ方

UTCPワークショップ「身体の思考・感覚の論理」http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/tbls.html 身体や環境が認知科学に導入され始めたのは第二派の始まった1980年代以降だ。どうも日本の文系の学者は分析哲学関連はよくフォローするけれど、本来の認知科学はあまり…

コネクショニズム・アプローチについて

コネクショニズム・アプローチが成功した領域は知覚と運動の比較的低次のレベルであり、思考と言語の領域や知覚と運動の高次のレベルではあまりうまくいっていない。その点ではピンカーのコネクショニズム批判は正しい。 認知心理学には、データ駆動処理(ボ…

論文「脳は量子コンピュータか?」から

Litt, A., Eliasmith, C., Kroon, F. W., Weinstein, S., & Thagard, P. (forthcoming). Is the brain a quantum computer? Cognitive Science.(PDF) http://cogsci.uwaterloo.ca/Articles/quantum.pdf(ポール・サガードのHP http://cogsci.uwaterloo.ca/B…

認知科学と進化論、私の勝手な意見

エドワード・リードもトマセロもヴァレラも、そろいもそろって著作で参照しているのはS.J.グールドの方であり、ピンカーと違ってドーキンスの方ではない。この違いが、私が進化心理学と生態学的アプローチを分けて考える根拠の一つにもなる。ここで誤解する…

神経哲学は用語が理解しにくいな(同一ブログからの引用ばっかり篇)

「ビルディング・ブロック・アプローチ」は、意識野全体を独立した意識の構成単位から成ると考え、特定の意識体験に関するNCCを見つけようとします。ただ、このアプローチにはちょっとやっかいな性質(問題点)があるそうです。それは、無意識的な主体が知覚…

意識研究の系譜と認知科学の系譜

「ノーベル賞科学者のアタマの中―物質・生命・意識研究まで」ASIN:480671187X*1を読むと、意識研究の系譜と認知科学の系譜は分けて考えた方がいいなと思う。意識研究はシュレジンガーあたりからクリックやペンローズなどを経る伝統があり、自然科学系のノー…

生成文法概観

標準理論(チョムスキー1965) 句構造規則 語彙 ↓ ↓ 深層構造 ↓ 変形要素 ↓ 表層構造 ↓ 音韻化

アマゾンのコメント付リストマニアと認知系言語研究の行く末

生成文法の入門書 http://www.amazon.co.jp/gp/richpub/listmania/fullview/R29X5RM1874SCN/ref=cm_lm_detail_ctr_full_2/249-6073413-7246757 「認知言語学研究の必携書」 http://www.amazon.co.jp/gp/richpub/listmania/fullview/WMRVAY9Q1RGX/ref=cm_lm_d…

認知言語学概観

認知意味論の原理 概念構造は身体化されている 意味構造は概念構造である 意味表象は百科事典的である(意味の辞書的定義との比較) 意味構築は概念化されている(それぞれの概念空間に対応している)