辞書の項目「プラグマティズム(pragmatism)」

…(2)理解の明白さを得るために次のような格率を適用することによって形而上学は大いに明らかにされる、という意見。「おそらく実際のふるまいを持っているはずの何かしらの効果を考慮すると、私たちは自分の概念作用の対象がその効果を持っていると思う。つまり、効果に対する私たちの概念作用とは、対象に対する私たちの概念作用の全体[と同じ]である。」(以上、C.S.パース)
概念作用の「意味」全体は実際の結果において表れると言う説。もしその概念作用が真であれば、その結果は促された振る舞いという形または期待された体験という形で表れ、もしその結果が偽であれば、その結果は異なるだろうし、別の概念作用の意味が同様に表われるという結果とも異ならなければならない。もし二番目の概念作用が別の結果を持つと思われないならば、それは実際には異なる名前を称した最初の概念作用[と同じ]でしかないに違いない。方法論において、それぞれの結果を追跡し比較することは異なる概念作用の異なる意味を確立するのに見事な方法であることは確かである。(以上、W.ジェイムス)
この格率はチャールズ・S・パースが1878年1月にPopular Science Monthlyで最初に提案した。彼はそれが現実の法則にどのように当てはめられるかを説明した。その著者はカントの純粋理性批判への熟考によってその格率に導びかれた。実質的には、存在論についての同じ扱われ方がストア派によって行われていた。その著者は同じ基準で測れないことの理論全体、実際には微積分に関するワイエルシュトラウスの方法全体、を一掃するために、その原則がたやすく誤用されるだろうと、続いて分かった。1896年にウィリアム・ジェイムスは「信じる意思」を発表、後には「哲学の概念作用と実際的結果」で、私たちに躊躇されねばならないほどに極端に 彼の方法を押し出した。その説では人の目的は行動であると仮定されたと思われる。60歳の現在の著者にとっても30歳の時にそうだったように強く勧めないストア的な公理である。逆に、もし行動は目的を必要とするとか目的とは一般的な記述の何かでなければならないとかと認めるならば、私たちは自分たちの概念を理解するためにきちんとその概念の結果に注意すべきというその格率そのものの精神は、私たちを実際の事実とは異なる何かへと、すなわち一般的概念(イデア)へと、自分たちの思考の真の解釈として導いてくれるだろう。それにもかからわず、長年の試みのあとでは、その格率は思考を比較的にかなりの程度に明確にすることへと導く上ですばらしい有用なものとしてその著者に認められている。それは念入りな徹底さをもって現実にいつも当てはめるべきだと、彼は思い切って言っている。しかし、それがなされるとき、以前にはなされていない、それが注意を向けたところの実際の結果が支えることのできる唯一の根本的な善は具体的な合理性の更なる発展であることを覚えていることによって、思考のさらに高い段階の明確さを得られることができる。すると、概念の意味はいかなる個人の反応にも全く存在せず、それらの反応がその発展に貢献するところの仕方の中にある。上で参照した1878年の論文では本当に、よいことにその著者は説教をするよりも実行をした。なぜなら、それらの一般性において一般的な観念の対象の現実を主張するような意味で、かれは厳密な格率を最も厳密でなく適用したからだ。
ここ4分の1世紀の間に広まった現在の意見では、合理性はそのものとしては善ではないが他の何かのためでありさえすれば善であるという。そうであるかどうかは総合的な質問であるが、合理性の理由が不合理であるというこのようなー矛盾の原理に訴えることでは解決しない。ほとんどすべての人が今や根本的な善は進化の過程に何かしらの仕方で存在することに賛成するだろう。もしそうならば、それ[根本的な善]は分離された個々の反応の中ではなくて、一般的または連続的な何かにおける個々の反応にある。連合、連続的になること、法則に統治されること、一般的概念(イデア)にみなぎること、はほんの一つの段階に過ぎず合理性の発展における同じ過程であるという考えに連続主義(Synechim)は見出される。これは初めは論理学の領域における数学的厳密度において真であると示され、そこから形而上学上で善を保つために推論された。パースがそれに適用したところの方法によるプラグマティズムに対してそれは反対しないが、一段階としてその手順を含む… (以上、C.S.パース)



Definition for James Baldwin's Dictionary of Philosophy and Phychology(published in 1902)
パースは1902年に出版されたジェイムス・ボールドウィンの「哲学と心理学の辞典」のいくつかの項目を執筆しました。これはその項目の一部である。「プラグマティズム」の項目の中にはウィリアム・ジェイムスによる定義も含まれています。[]内は訳者による挿入。
分かりにくい訳文がかなり残ってしまいました。訳者の能力の問題もありますが、パースの原文も相当に読みづらい文章ですので、ご了承ください(一部、訳者にも本当に意味の分からなかった文もあります、まぁW.ジェイムスの項もここでは分かりやすいとは言えない)。「概念作用」という訳語は自分でもまどろっこしいです。「概念的思考」と訳そうとも思ったのですが、どうせ分かりにくさに変わりがないのでやめました。
これまた数年前に自分のHPのために訳した文章です。これでもけっこう手直ししました。たぶん私だけじゃなく誰にも分かりやすくなど訳せないと思う。パースは関係詞節を乱用しすぎ。
Charles S. Peirce: The Essential Writings (Great Books in Philosophy)

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