研究データの解釈法

Hurleyが報告している研究結果は、なんというか、結構ショッキングなものだ。暴力ヴィデオ・ゲームやテレビでの暴力シーンの視聴は、子供だけではなく、青少年や(若い)大人の暴力的行動傾向を有意に高めるらしい。8歳の時点で暴力表現を好んで見ていた子供たちは、10年後に(つまり18歳時点で)高い暴力傾向を示しており、さらにその12年後(30歳時点)までの間に重犯罪を犯す可能性も高いことを示した研究もある。

えー、これは困りましたね。研究データの解釈がおかしいです。心理学では研究データの解釈法はゴリゴリに教わるのですぐ分かります。例えば「相関関係からは因果関係は分からない」は基本(よく見る間違い)。上の例だと、暴力シーンの視聴が高い暴力傾向を導くとしているが、そんなことはここからは確実には分からない。第三の要因が予想されるからだ、つまり生得的な暴力傾向。生得的な暴力傾向を持っていたから暴力シーンを視聴したのであって、10年後に高い暴力傾向を示したのはその生得的要因のせいである可能性もある。というか専門が違うとはいえ、今時メディアの影響をこんなに過大に見積もっている時点で不勉強(ゲーム脳と似た間違い)。特定のメディアだけでそんなに強い影響を与えるわけがない(そう言ってる研究成果はかなりある)。すでに説明したように生得的要因もあるが、もう一つ大きな要因として社会的要因もある。話の文脈からはこっちの方が重要な話じゃないの(G.H.ミードぐらい読んどけと言いたくもなる)。まぁ、Hurleyが本当にしたかったのは表現の自由の話だったらしいから所詮ネタにすぎないのかもしれないが、まずいだろやっぱり。