あまりに便利な脳解説サイト「脳の世界」

脳の世界:京都大学霊長類研究所・行動発現分野 http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/brain/brain/index.html
脳解説サイトとしては完璧だ。説明領域は広いし説明文は分かりやすいし。これを知らなかったのは不覚。
それにしてもここで紹介されてる作業記憶の実験は見事。作業記憶を調べるのによく使われる簡単な遅延課題では測っているのが作業記憶だか短期記憶だが区別しがたいが、ここでの実験ではそれを見事に克服している。これだって遅延課題の一種に変わりはないけどね。でも人間用の課題と比べても課題の複雑さがうまく調整されているのがよく分かる。これなら信用できます。で、以降は知識のある人向けの文章。
ちなみに、私は作業記憶と短期記憶とは概念として共に必要だと思う。片方の概念に吸収させようとする人がいるけどまずいと思う。作業記憶と短期記憶とが常にはっきりと区別できるわけではないが、現象面で互いに重ならない部分がある。作業記憶のモデルでは視空間パッドや音韻ループがあるように音声や画像のイメージによる操作が重要である。それに対して、短期記憶でも同じように音声や画像のイメージを伴うことも多いが、必然的とはいえない。複数の数字を覚えるのに、その数を音声的や画像的に繰り返す覚え方もある*1が、そうしたイメージを伴わない覚え方がないとは言い切れない*2。短期記憶では操作を伴わないのでイメージが絶対に必要とはいえない。必要なときに短期記憶から検索できればそれで構わない。もちろん作業記憶と短期記憶が一致する可能性は否定できないが、あまり安易に一致させるのも問題だ。こういう点から考えても上の実験はよく出来ている。課題が程よく複雑なので確実に作業記憶が働いていると言えそうだ。

*1:記憶のリハーサルのことを言っているのではない。あくまで短期記憶の話

*2:たぶんある。実証は困難そうだが、感覚として理解してもらうしかない