論文「脳は量子コンピュータか?」から

Litt, A., Eliasmith, C., Kroon, F. W., Weinstein, S., & Thagard, P. (forthcoming). Is the brain a quantum computer? Cognitive Science.(PDF) http://cogsci.uwaterloo.ca/Articles/quantum.pdf(ポール・サガードのHP http://cogsci.uwaterloo.ca/Biographies/pault.htmlから)
論文「脳は量子コンピュータか?」要約と序文と結論しか読んでないが、言いたいことは大体分かる。論文タイトルの質問への答えは「ノー」と否定的だ。それは計算論レベルでも生物学レベルでも心理学レベルでも量子コンピュータが必要だという結論が出てきていないからだ。だから量子コンピュータへの賛同者はその必要性をきちんと示すべきだ、という結論で終わる。まぁ、ペンローズみたいな意識問題は量子で解決みたいな安易な話よりはよっぽどよい。私はそんなの解決になっていないと思う。しかし脳を考える上で量子を考慮する必要がないということにはならない。だから、著者たちはその必要性を訴えるマトモな研究を求めているともいえる。本文には詳しい分析があるので踏み台にはいいだろう。論文なんてそういう風に生産的に読むべきだ。
私が気づいたことを幾つか。まず、なぜか晩年のエックルスが文献表にない。脳の量子論としてはちょっと??なところもなきもあらずだが、ペンローズよりはよっぽど見込みがあると思うが。考慮ぐらいはしてくれよ。あと、量子コンピュータとニューロコンピュータを対立させているがこれは正しいのか。この場合はニューロコンピュータは現存のコネクショニズムに限定してるのか(でも文献表にPDPモデルがない)。そうでなければ、将来的にはニューロコンピュータに量子計算が必要ということはありえなくもない。結局はニューロコンピュータに何を求めているのかにもよるのだろうが。まぁなにを言おうと、脳のモデルに量子計算が必要かどうかはこれからきちんと実証されるべきであることに変わりがない。認知科学にはやるべきことはまだあるぞ!