人と違って、猿は猿真似が下手

問題解決法のまね、2歳児が猿に圧勝 http://www.asahi.com/science/update/0918/TKY200709170240.html
ブックマークのコメントを見ていると無知丸出しでうんざりすることも多いが、今回もやっぱり認知科学の動向を知らないと研究の意義はうまく理解されないんだなと思った。
他者の意図の理解(つまり心の理論)に関しては以前から話題になっていたが、模倣の重要性は比較的最近の認知科学の話題で、模倣能力に人と類人猿との重要な違いがあることは論議されていた。猿真似という言葉はよく使われるが、実は類人猿でも他者の真似をするのは難しいという研究結果は既にあった。人と類人猿に心の理論といい模倣といい社会的な学習能力*1による違いがあることは意識されていたが、これだけ大規模に比較テストしてはっきりと結果が出たことはすごいことだ。
しかし、心理学者Meltzoffも言っていたが、模倣は出発点に過ぎない。例えば、他者を心に描くことで理解するとされるシュミレーション説を考慮すると、心の理論と模倣能力とには深い関係があるかもしれない。さらに、人の持つ特異な能力という点では、これらの社会的学習能力と言語能力とには関連があるかもしれない。これからさらに研究が進むことを望みたい。

*1:進化心理学的には、マキャベリ的知性や互恵的利他主義などが関わるが、これらは人と類人猿での共有部分だ