脳科学的な還元主義をどうするか

From Reduction Back to Higher Levels(PDF)
http://mechanism.ucsd.edu/~bill/research/cogsci-reductiontohigherlevles.pdf

認知神経科学が差し出す認知的働きを脳へとつなげる入場権は認知科学者すべてに歓迎されているわけではない、分子的働きの観点から認知的働きを不要のものにしようとする試みのような還元主義な探求への展望を切り開く場合に限っては特にそうだ。
Bechtel, W. and Abrahamsen, A. (2008). From Reduction Back to Higher Levelsの結論より翻訳

もともと還元主義嫌いの私は、読んでいてうなずいてしまった。科学に生き方や生きがいを求める下らない日本の俗流脳科学ブームなんかよりよっぽど重要な問題だ。

有機体の比較的高いレベルにある認知的活動の理解への特別な関心を失うことなく、認知科学者が還元主義な探求の成果を受け入れることはできる。
Bechtel, W. and Abrahamsen, A. (2008). From Reduction Back to Higher Levelsの結論より翻訳

私もそうは思うが、ただ当の還元主義の側に時々傲慢を感じることもあって、そう謙虚な態度をとるのは難しいこともあるのだが。科学的厳密さの点で還元主義の方が力が強いってのに。還元主義の問題は論理実証主義時代から続く面倒な問題なのだが、そう簡単には解かれそうになさそうな気がする。せめて、ほどほどの妥協と和解くらいできればいいのだけど*1

*1:本当はこの後でなぜ還元主義だけではダメなのかを長々と話した方がいいのかもしれない。還元主義バカって結構いるんだよね、日本って。日本の科学音痴の多さにはうんざりだけど、還元主義バカだってこれはこれで困り者だ。ある程度のことは「心理学の危機再び、または学際分野としての認知科学の解体」にも書いてあるので参照