量子意思決定論に興奮してネットで調べてみる(そして匙を投げる)

私の数少ない愛読雑誌の日経サイエンスの最新号には、私のような認知科学好きにはヨダレのでるような記事が目白押しだったが、特に記事「パラドックスに合理あり | 日経サイエンス」には興奮してしまった。私ごときがその内容をうまく説明などできないので、ぜひ直接にその記事を読んでもらいたい。それで私はそれに興味を持って、ネットで関連論文を検索したのだが、ヒルベルト空間とかの高度な数学を用いた難解な論文(「A quantum information processing explanation of disjunction effects(PDF) 」ならまだ読みやすい)だったので結局は匙をなげた。
その記事で扱われていたのは量子意思決定だったのだけれど、行動経済学の実験(特に囚人のジレンマ)で見られる不合理な行動を量子計算で説明できるという話。例えば、囚人のジレンマでは裏切る方が合理的な行動(ナッシュ均衡)なのだが、互いに協力する方が互いに得する(パレート均衡)。実際の実験では合理的に予想されるよりも協力が選ばれやすいのだが、その行動を量子力学で使われる計算でうまく説明できるという。これは社会秩序のホッブス問題への説明としても適切だと感じてスゲェ〜と思ってしまった。それでネットで調べたのだが、英語論文は見つけたけど記事で分かった以上の内容は読み取るのが難しかった。自分的には、行動経済学の結果では人間は確率が苦手だとされるが、不確実性をそれ自体として扱える量子計算ではそうした人間の判断は別の意味で合理的である(客観確率からは不合理だが主観確率では合理的?)と言えるのかもしれない。とはいえ、この説明がどこまで一般化できるかは研究の進展を待つしかなさそう。
そういえばカーネマンの最近の本にあったが、経済学者は実験結果には影響されないけれど数理的な形式化された成果には反応するらしいので、(やる気があるなら)日本にも研究してる人がいてもおかしくない気がする。個人的には、この成果は(記事にもあるように)脳が量子コンピュータであるかどうかとは別の話であるので、量子計算が物理学にとってとは異なる人の心にとって持つ意味合いは何か…みたいな哲学的な問題を考えてしまう(のは私の癖なのだなぁ)。