社会的認知についての一般書「心の中のブラインドスポット」の紹介

社会的認知とは、社会心理学認知心理学的な考え方を適用した研究領域であり、色々と面白い研究成果もあるのだが、残念ながら日本ではあまり知られていない。そのことについては以前から懸念を抱いていたのだが、社会的認知についての一般書「心の中のブラインド・スポット: 善良な人々に潜む非意識のバイアス」が出ていたのでお知らせしておきます。私自身もほぼ新刊であるにも関わらず、本屋の棚にこっそりと並べられているのを偶然に見つけて驚いたぐらいです。きちんとしたレビューを書くのは面倒なので紹介にとどめておきますが、私が中を見た限りではなかなか悪くない本だと思います。日本では、行動経済学脳科学のような目立つ領域を除くと、科学的心理学の本が一般にはあまり読まれないのはもったいないことです。
この本は、社会的テーマについて認知心理学的に研究する領域である社会的認知について、認知科学全般の基礎となる二重過程説に則って説明されています。例えば黒人について意識的に差別を働かせているわけでもないのに黒人に関する情報だけが異なる処理をされることなどが実験で示されています。黒人や美人を意識的に差別や優遇しているつもりがなくとも、無意識のうちの他とは別の仕方で判断してしまうことが実証的研究から分かっています。こうした社会的認知についての一般向けの本というのは、日本では(たとえ翻訳であろうと)珍しいのでもっと読まれてほしいと思います。

心の中のブラインド・スポット: 善良な人々に潜む非意識のバイアス

心の中のブラインド・スポット: 善良な人々に潜む非意識のバイアス