2010年代に入ってからしばらく経ってからだと思うのだが、はてなハイクにこれからの心の科学(認知科学)で重要となる研究テーマを予測した覚えがある。確かそれは脳の系統発生と個体発生がこれから(2010年代に)心の科学的研究で推し進められるべきだと書いた気がする。

2010年代の認知科学への予測の答え合わせ

そう思った理由はたしかこんな感じだ。それまでの00年代には進化心理学認知神経科学(脳イメージング)が流行っていた。しかし、そのブームも行くとこまで行き着いたら行き詰まるだろう。なら、次に認知科学的に重視されるべき研究領域はなんだろうかと考えた。同じく進化論でも進化心理学が適応論を強調していたのに対して、これからは系統発生に注目されて色んな動物の認知(心)が研究されるだろうと予測した。さらに、脳の研究は流行っているが、これからは脳の発達的研究が未知の領域として経験的に研究可能になるだろうと予測した覚えがある。それでこれからは系統発生と個体発生が重視されると言い方を揃えた気がする。

2010年代が終わってこの予測はどうなったかと言うと、目の付け所は悪くなかったがそこまでは当たってはなかった。動物認知については前より研究対象となる種が広がってはいる(例えばイカやタコ、変わり種では植物の心の研究も見たことある)が、動物の心の研究に人間を基準にした見方をやめようとやっと言われ始めたばかりで、まだまだこれからな感じが強い。子供の脳の研究はなくはないが、子供の脳のイメージング研究は困難も多く、技術の発展や研究手法の開発などまだまだ乗り越えるべき壁は厚い。

つまり、脳の系統発生と個体発生は重要かもしれないが、研究はまだこれからの発展が望まれるのレベルをなかなか超えない。私の予測が当たったとはとても言えない。

これからの予測も書いてみたが、上手く書けてない

で、2020年代に入っての予測があるかといえば、あまり思いつかないが少しならある。それは既に10年代にあった統計を用いた研究の重要性がより上がることだ。21世紀に入って、機能局在論から計算メカニズムへと脳の研究が進んできたが、メカニズム的な研究はこれからも増えはするだろうが、そこには限界があるのでむしろ脳のデータを全体として統計で直接に分析する手法が広がるような気がする。脳のデータとメカニズムを結ぶ研究としての統計的分析を想定している。

脳から認知研究一般に目を向けると、理想的観察者モデルのような統計的な研究が増えそうな気もする。素朴な最適化を心(脳)に当てはめるのは無理があるので、むしろそこからの距離を記述的に求める方がまだ見込みがある。ただパラメータを求めるだけの研究が増えるだけかもしれないが、進化論とセットにしてそのパラメータになった自然淘汰的な理由を探れればより理想的だ。(追記:う〜ん…これじゃカーネマンの行動経済学の理論とあまり変わらんな。これじゃただの適当な思いつきだよ。統計-情報の話は改めて書くべきだな)

でも、これからの予測があまり思いつかないそもそもの原因は、認知科学そのものが学問的にパッとしなくなる可能性の高さが頭の隅にあるせいかもしれない。まぁ、だからといって他を見てもさしてめぼしいもん見つかんないけどね。