私は子供の頃にバブル期を過ごしており、その軽薄さが子供心にも大嫌いだった。それが長じて、若い頃は(環境問題への関心も重なって)経済については反成長の立場だった。当時は反成長の立場は珍しいものではなかったが、その中でも異論があるのだが、その話は別の機会としよう。
その反成長派の私が、いわゆるリフレ派の話に出会った。そのリフレ派から人々に(再)分配するにはパイを大きくする必要があると教えられ、私は反成長の立場を弱めることになった。今考えると、これこそが前回に触れた正統派リベラリズムであり、これこそが欧米のリベラルであり日本がおかしいとの議論はそれ以降よく見かけるようになった。私はそれを受け入れた。
しかし、その後に安倍政権下で消費税増税が実行される上で、リフレ派の中でも景気を悪くするはずの増税に反対する人が少なかったのをよく覚えている。その頃の私は、特定の政策に反対するというよりも、安倍政権下での議論の少なさにすごく不満だらけだった。
結局もっと後になって、消費税増税が景気を悪化させたと騒がれるようになった。それでも、アベノミクスは新卒採用を増やしたと叫ぶ人がいて、私は試しに日本の失業データを見てみた。日本の全体の失業率は民主党時代から下がり始めており、その下がり方は緩やかに一定だった。つまり、新卒採用に安倍政権の政策の影響があったとはとても考えられなかった(新卒採用の増加は団塊世代の大量退職と入れ替わりと考えるのが妥当)。この辺りで、リフレ派の欺瞞にかなりウンザリしてしまっていた。
とはいえ、これはリフレ政策そのものが間違っているという話ではない。むしろアメリカではそれなりに機能していた。それより大事なのは、マクロには経済が大きくなっていたアメリカで、トランプ政権が誕生したことだ。
勘違いしてる人もいるけど、バイデン政権では景気はそこまで後退してない(コロナ禍を考えれば頑張ってたと言える)。そして、今期のトランプ政権はマクロな経済を後退させるはずの関税政策を推し進めている。つまり、今の教訓はマクロ経済の増大だけでは駄目だということだ。
景気が良くなれば下々にも金が回ってくるというトリクルダウン(金が滴り落ちること)は、データによる研究によってとっくに否定されている。これはネオリベの否定でしかないように見える。だが、バイデン政権は一般的に思われてるよりは再分配政策をしていたのであり、それでもトランプ当選が帰結した。その点では正統派リベラリズムの根底が否定されているとも言える。
正統派リベラリズムの基本は景気拡大+再分配の組み合わせだが、既にこれがうまく行ってないように見える。日本では景気拡大そのものが失敗してるのでそこで話が停滞している(やっと移民で騒ぎ始めた程度)。しかし、正統派リベラリズムの失敗こそが現在の反グローバリズムへとつながっているのであり、wokeなリベラルが頭おかしい(庶民からはそうにしか見えない)のはそんなに重要ではない。
つまり、マクロな経済を拡大させてそれを再分配する程度では、グローバリズムにおけるミクロな経済の偏った分配状況を直すには遠く及ばないのだ。だから、関税政策で地域復興を目指すのも(できるのか?は別にして)理解はできる。
ミクロな分配状況をなんとかする方法には現在の現実的な目ぼしいものには二つある。それは共同体主義(ポストリベラル)的な方法と、テクノクラシー的な方法だ。地域復興は共同体主義の方向に近い。もう一つは(行政のAI化のような)テクノクラシー(技術による統治)であり、テック右派はこっちに近い(もちろん左派にもこの立場はいる)。
ちなみに、私自身はこれらとは中間的な立場であるWeb3的な立場(技術を用いて共同体の形成を目指す)に好意的だが、その話はまた別の機会にしよう。