科学はボルヘスの図書館

私自身はアルゼンチンの空想を好んでいる。神は古いヨーロッパの人々が想像したような<自然の書>を書きはしなかった。彼はボルヘス風の文庫を著したのである。そのどの一つの本も可能な限り簡潔ではあるが、その一つ一つの本は他のどの本とも整合的でない。どの本も余計なものではない。というのはどの本に対しても、人間に理解のできる自然のある断片があり、そこではその本が起こりつつあることの理解、予測、またそれに影響を与えることを可能にするのであって、他のどの本もそうはしないのであるから。まとまりがないどころか、これは<新世界>のライプニッツ主義なのである。ライプニッツは神は最も単純な法則を選びながら、一方では現象の多様性を最大にしたと言った。まさしくその通り――しかし現象を最大にし単純な法則を持つ最良の方法は、互いに整合的でない諸法則、一つ一つがあれもしくはこれに適用されるが、どれもすべてには適用されない法則を持つことなのである。
イアン・ハッキング「表現と介入」ISBN:4782800320 p.356-7より

ボルヘスはアルゼンチンの作家。ボルヘスの図書館は有名な短編に描かれている。