随筆

ハイデガーにおける論理学と形而上学

理性を解明し規定することが正当に且つ必然的に《論理学》と呼ばれるかぎり、西洋的な《形而上学》は《論理学》であるとも言える。存在者たるかぎりの存在者の本質は、思惟の視圏のなかで決定されるのである。 ハイデガー「ニーチェ ヨーロッパのニヒリズム…

知識は経験の代わりにはならない

日本には役に立ちそうもないゴミのような応用学がはびこっている。そもそもの研究者が頭でっかちで話にならない場合を除いても、最大の原因は応用に必死で基礎への理解がないのが最大の原因だ。認知科学は基本が基礎科学だと私は思っているが、認知科学に関…

日本昔話の構造分析

この論考では日本昔話をレヴィ=ストロース流に構造分析したい。神話や昔話の物語分析にはレヴィ=ストロース型以外にも、教訓型、ユング型、プロップ型などがある。教訓型(または社会科学的な機能主義による分析)とは、その物語には属する社会にとって役立…

進化論への言語ゲーム的な理解

言語ゲームは後期ウィトゲンシュタインの著作「哲学探究」で提出された用語である。はっきり言ってしまうと、言語ゲームという用語は多くの人に使われているが、当のウィトゲンシュタイン自身がきちんと定義してない上に、この用語を多様な文脈で用いている…

人の合理性はどこに存在するのか

始めに結論を書いてしまおう。人の合理性は理性の中にはない。人の合理性は抽象的な論理的判断の中にではなく、その場その場で行なう状況判断の中にこそある。だから、いくら待っても理性的な賢い民衆など現われることはない。だからといって、政治家やエリ…

建築デザインにおける生態心理学的な考察

テレビの美術番組で欧米の有名な建築家の建物を見てつくづく感心した。よくモダニズム建築批判とかを耳にするが、その代表のル・コルビジェの作品ってこんなにすごかったんだ、と番組を見て驚く。建物の端から端まで計算されつくされていることに感心。結構…

インターネットはホットなメディア、だからこそクールなテキスト中心主義者になれ

有名なメディア論者マクルーハンは、ラジオはホットなメディアでテレビはクールなメディアだ、と言っている。テレビは映像と音声によって多くの情報が流されるので視聴者は受身になるが、ラジオは情報が音声だけなので想像力をはたかせる余地があり積極的に…

経済活動において人が知る情報はいかなる役割を果たすか

言葉による情報が現実における情報と一致するとは限らない。その一致を直接に確かめられなければ、あとは信頼によって納得するよりほかはない。これを理解していない人があまりに多すぎる。欠陥商品とか欠陥住宅とかはその場その場の対処だけでごまかしても…

認知科学のポストモダン化と意識の脱構築の二つの方法

認知心理学は1960年代に成立した当初は、人の心をコンピュータ・メタファーによってアルゴリズムのようにモデル化しようとする試みだった。それまでの主流の心理学での行動主義が人の心を観察不可能なブラックボックスとして研究していたのとは対照的である…

やおい理解の基本文献「子供が叩かれる」

フロイトの論文「子供が叩かれる」。20世紀初めのヨーロッパで書かれた論考にもかかわらず、日本のオタクやヤオイの理解にとても役立つ。この論文では男性と女性が空想する「子供が叩かれる」という幻想を比較している。日本と欧州という異なる文化にもか…

私たちはいかにして世界を知るのか--哲学的認識論について--

私的な序論 ある意味で、私は昔からたった一つの疑問についてしか興味を持っていなかった。他の人は世界をいかに見ているのか。果たして私と同じに見ているのか、そうではないのか。人は物事をどのようにして知るのか。なぜ同じ物を見て意見が分かれるのか。…

互いに矛盾したシステムか均質化されたシステムか、という不毛な選択

日本ではシステム間の専門分化が激しく、システム間の矛盾が大きな問題になっているように思う。典型的な例は、教育システムと経済システムである。教育システムは真面目で勤勉な生徒を育てることに勤しんでいるが、そういう人物がいざ就職しようとすると大…

人工知能におけるいくつかの方法

この論文では人工知能を実現する方法をいくつかに分類して説明します。 はじめに、人工知能を実現する方法として古典的な2つの方法を紹介します。これらは1960年代から70年代に作られた有名な言語理解プログラムである。1990年代に企業で作られた…

もっとも善良なるヒステリー孔子

孔子はヒステリーである。しかも、歴史上でもっとも善良なヒステリーである。孔子とはもちろん、古代中国の諸子百家の中の人物である。この場合のヒステリーとは性格類型のことである。ラカン派の評論家ジジェクの定義を借りると、ヒステリーとは自分の欲望…

文化相対主義と人類普遍主義との不毛なワナ

最近、ピンカーなどの著作で人間の文化を超えた共通性が叫ばれている。彼らは認知科学や生物学の人たちである。認知科学といっても正確には、脳研究や動物研究を経て進化心理学へと向かった系譜の人たちである。ちなみに、ヴィゴツキーやブルーナーなどの子…

ヒステリーからうつへ--現代の中高年の問題--

日本のバブルが終わったとき、つくづくよかったと思った。これでドンちゃん騒ぎも終わりだと。それからいろいろあったが、ましになったとはいえ、それほど変わらない気もする。政治もマスコミも空疎な大騒ぎを続けている。本当に大事な問題はさっぱり表に出…

愛してるって何度も言って

ある種の男は、社会とか政治とか国家とか、大きなものについて語るのが大好きである。それは昔ほどではないにしても、今でもそういう大いなるものを好んで論ずる男は多い。私からすると、普遍名詞の一般性を平気で前提にする語り方、例えば「国家とは…」「男…

日本のヒステリーを解除せよ

いまだに日本にはヒステリーが蔓延している。戦後これだけ経ってまだ克服できていない。ここで言うヒステリーとは性格類型のことである。ヒステリーはある欲望に向かってまっしぐらに行き続ける。性格類型で対比すると、考える前に行動するのがヒステリーな…

家族という重層的に決定される集まり

角田光代「空中庭園」(文春文庫)isbn:4167672030。宮台真司の紹介による映画のあらすじとは異なるようだ。ところで、この小説は、宮台真司がその話を得意とする、郊外を舞台にしている。郊外というには田舎すぎる気もするが、ここに描かれるのは、宮台真司…

なんでおまえはわざわざそんなことを言うんだよ

俗流のポストモダン思想や社会的構築主義ほどたちの悪いものはない*1。彼らは異常性や多様性を賞賛する。しかし、彼らはわざわざ異常性や多様性を公表することで初めて享楽を得る。彼らは自らの内側にそれだけで肯定的な何かを見出すことができずに、他人に…

そもそも日本の政治家は問題が解決することを望んでいない

日本の政治家はヒステリーである。ヒステリーとは病名である。しかし、ここで問題にしているのは病気としてのヒステリーではない。性格類型としてのヒステリーである。精神の病を性格類型に応用することは、クレッチマーを始めとして多く行われている。例え…

インターネットはサファリ・パークか

ネット上は自由保護区にすぎない ブログはフロー(流動)かストック(蓄積)かという記事を読んだが、どう考えてもフローだろうと思う。ブログは掲示板よりはましかとも思ったが、ちょっと見て回ればそうでもないと分かる。みんなして、その場その場の感想を…

なぜ成金は悪趣味か?

ある男がいるとする。彼は昔は貧乏でお金がなかった。お金は、欲しいが持っていなかった。この矛盾が、彼の欲望をお金へかき立てることになった。この時点では、彼にとってはお金が対象aである。対象aとは人が生きていくうえで必要なものであるが、現実にお…