反表象主義を思弁的実在論の視点から説明してみる〈後編〉

前編からの続き 反表象主義の主張をあらためて確認する まずは、反表象主義の中心的な主張である「内容の難しい問題」(hard problem of content)を説明した、前回に翻訳した部分をもう一度引用します。 心は本質的に内容を持つ訳ではない、なぜなら内容を伴…

反表象主義を思弁的実在論の視点から説明してみる〈前編〉

認知科学における一立場である反表象主義については、このブログでも折りに触れて軽くは言及してきた。しかし、反表象主義について独立した記事を書くのはずっと躊躇してきた。 それは、私が反表象主義に批判的なのに日本では反表象主義がほとんど知られてい…

自由エネルギー原理が正しいときの奇跡に気づく

この前の統一理論としての予測処理理論を批判する論文を読んで以来、疑惑の種が私の中に蒔かれてしまった。その後もいくつか関連記事を読んでるけど、あれ?これは?と言った疑問部分が目に付きやすくなってる。 予測処理理論の関連理論の間の関係がよく分か…

予測処理理論は用語があいまいに使われているのか?

この前、統一理論としての予測処理(PP)理論を批判する論文を読んでいると書いた。それは次の論文だ。 google:Piotr Litwin, Marcin Miłkowski Unification by Fiat: Arrested Development of Predictive Processing には、一通り内容には目を通した。それな…

最近のWIREDのAI記事をお勧めしてみる(一部コメント付き)

ネットにある日本語で読める信頼できる科学記事…というのはお世辞にも多くない。その中でWIREDの翻訳記事は質の高い信頼できる科学的な記事ばかりで当てになる。特に初期の情報が混乱してた中での新型コロナ関連の記事はとても助かった。 WIREDは人工知能(AI…

知覚の予測処理モデルの神経生理学的な証拠を調べた論文を自動翻訳を使った手抜きで紹介する

ネットで調べ物をしてたら、記事タイトル通りの知覚の予測処理モデルの神経生理学的な証拠を調べた論文を見つけました。 google:Kevin S. Walsh, David P. McGovern, Andy Clark, and Redmond G. O’Connell Evaluating the neurophysiological evidence for …

論文「Is the Free-Energy Principle a Formal Theory of Semantics?」の背景を説明する

ネットを見てたら、自由エネルギー原理で有名なフリストンが共著者の最新論文が紹介されてた。 ツイートを見てたら、この論文がenactivismを否定してるかのような書き込みを見て、気になって論文を眺めてみた。その結果、それは勘違いだと思ったが、その哲学…

またネットですぐ読めるお薦め論文を紹介してみた

なにかマトモな記事は書きたいが、なかなかやる気が起こらない。アブダクションについては、既に中間報告はしたが未だに進行中のテーマだ。教養についての記事もある程度の準備は前から進めているが、まだ書く気がしない。教養と言っても、これが教養だ!的…

アブダクションについての調査-中間報告

私は興味の出たテーマをあちこち調べてることが多いが、その際にたまに全く別の興味から調べていた内容どうしが結びついてるのに気づくことかある。最近ものすごくそれがあって、アブダクションと最良の説明への推論の関係を調べてることは既にここでも触れ…

TEDにあがってた実行機能についての講演動画

以前のメタ認知についての記事で、実行機能に触れたことがある。 最近TEDを確認してたら、実行機能の研究者による講演の動画が上がっていた。見てみたら思ってた以上に良かったので、ここで紹介します。 後半は講演者自身による研究の紹介があって、これも面…

AIでデータの偏りと社会の偏りは分けてみよう

このブログの前回の記事で、相関しか見ない人工知能では知的な機械としては限界があるとするパールの見解を紹介して、相関しか見ないニューラルネットワークは現実の偏りを学習すると書いた。 その後に、新型コロナ騒ぎも含めて色んな事情で大事なブログを確…

科学的分析の道具としてのニューラルネットワークを勝手に考えてみる(追記つき)

しばらくの間、このブログが放置状態になっているのは気になっていた。前に触れた、アブダクションとIBE(最良の説明への推論)との関係については、関連論文からめぼしい部分を見つけて引用のためにそれを翻訳したりと、準備は進めているがまだ記事を書く段階…

私にとって論文漁りはもはや趣味と習慣と化してるので、興味を持って調べている話題は幾つかなくもない。でもまぁ、過去にもこのブログで記事にしてない興味を持っていた話題はいくらでもあった。文化心理学だって学生時代から知っていたにも関わらず、この…

楽観主義バイアスは人類に共通の認知バイアスか?

少し前に、ここのブログの記事である論文に付属していた認知バイアス小辞典を紹介した。そこには有名なバイアスも多く説明されていたが、次の認知バイアスもよく見かける有名なものだ。 楽観主義バイアス:好ましい出来事の確率を過大に見積もり、嫌な出来事…

書評 ブリタニー・カイザー「告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル」

「告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)」 あのケンブリッジアナリティカで働いていた女性がその経験を描いた驚くべきノンフィクション ブレグジットやトランプ当選に貢献した企業ケンブリッジアナリティ…

社会生物学が還元主義的でないことを進化ゲームから理解する

少し前にネットで、哲学者がドーキンスの機械論を論じていた記事を読んでいて、あぁ〜この辺りについては私が説明しておいた方がいいのかなぁ?と感じてしまった。 社会生物学(行動生態学)1や進化心理学については、一応は私の関心領域と関わりが深いので一…

社会を統治する新しいパラダイムを探ってみる

最近の私がよく調べたり考えたりしてるものがある。それの中の主な二つが、統計(情報)の話とアーキテクチャの話になる。ただ、私が考えてるテーマを直接書いてもなかなか興味を持ってもらえそうにはないので、もうちょっと現在の状況に合わせた形の話題にし…

認知バイアス用語集が便利な事典項目

私が最近に認知科学について興味を持っている内容が、一般向けにはマニアックすぎて書くのを躊躇している。そんな内容を書けないならこんなブログ続ける動機などないのだが、とりあえず比較的どうでもいい軽い話題でしのごうかと思う。 最新版 事典の認知バ…

前回に挙げたメタ認知の記事で、書いてはみたけどなくても支障ないと気づいて消したメタ表象の節があったので、勿体無いので公開。 ここから。メタ認知と実行機能で共通する… その共通する特徴はメタ表象なのだが、これを説明するには心の理論に触れないとい…

メタ認知はなんとか中毒を抑制できるのか?

こうした脳の手抜きを防ぎ、「正義中毒」に飲み込まれないようにするためには、どうしたらよいのでしょうか。 中野さん ひとつ提案したいのは、「メタ認知」を鍛えることです。「メタ認知」とは、いわば自分を監視するもうひとりの自分。 どんなときに「許せない!」…

脳科学で彩られた記事を読む方法、教えます

中野信子がマスメディアに出始めた頃は、話題に合わせて新しい論文を適切に参照した発言をしていた。それまでマスメディアに登場してた脳科学者に懲りごりしてた私は、(研究の一般化に疑問はあれど)その賢い発言に感心してしまった。しかし、比較的最近にな…

統計的因果推論を考え方から理解してみる(未完)

途中まで書いて力尽きた記事を勿体無いので公開。以下もここと同じリスト形式内の文はすべて追記として後から付け加えたもの 相変わらず統計の勉強はずっと続けているが、統計的因果推論もその一つだ。私は、自分も教えられた心理学の標準的な統計の知識が間…

最近ラジオであるニュース番組を聞いていたら、ある人が専門家の間で見解が異なる場合はどうしたら良いのか?に答えていた。 その人が言うには、専門家から直接に聞くのではなくリスクコミュニケーターを介せばよくて、マスメディアがその役割を果たすべきだ…

認知科学そのものについては、何をどこから記事に書けばよいのやら途方に暮れつつあり、どうも書く気が起こらない。そもそも最近は認知科学そのものよりも別のところに興味を持ってしまい、その内容を自分のための整理とメモも兼ねて記事に書いてもいいかな…

折り返しものさしによる分極化指数への批判は正しいのか?

以前にここで書いた記事「記事「ネットは社会を分断しない」を分析する」と似た内容を、さらなるデータと分析によって徹底的に論じた記事があったので、お勧めします 分断と分極化の違いをはっきりと書いてくれてない1などの欠点もあるが、私にも賛同できる…

ながら運転の危険性を注意の心理学から考えてみた

テレビやラジオで、時々スマホを片手にしてのながら運転の事故があった時に、専門家に話を聞くことがあるのだが、聞いていて満足できることはまずない。もちろん話を聞く専門家の選択に問題があるのかもしれないが、それよりも認知心理学についての知識があ…

最近読んだネットですぐ手に入るお勧め論文

認知科学については、今でも色々と読んだり考えたりはしているのだが、自分の興味と日本での世間一般の認知科学について知識との差が大きすぎて、何を書けばいいのかよく分からない。実際のところ、最近このブログでよく読まれてるのは、未だに生成文法と認…

新しい唯物論と認知科学における身体化は無関連ではない

世界はそもそもどうなっているかという真のontologyを彼が開きます。我々は物(を支える技術)と無関連に生きられない。加工品はそれをもたらす加工品と人の連鎖(ラトゥール)の通時的蓄積というontologyに支えられ、表象は表象と人の連鎖(スペルベル)の…

この前ネットを見てたら、こんな記事をみつけた。 ネット上で社会学者の評判はなぜ悪いのか ただ、私もこの辺りについては思うところがなくもないので、試しにちょっとなんか書いてみようと思う。 私と社会学の出会い もちろん、私は社会学にそこまで詳しい…

ラジオを聞いてたらどっかの哲学研究者が、AIは感情を持てないから所詮人間とは違う…みたいなことを話していて、まだその場所?と軽く馬鹿にした。 人工知能が人の感情を引き出す振る舞いをして、人の側が人工知能に感情があると思い込めば、それだけで人を…