認知科学

ここのブログ記事に書いた自分の直感的理解が論文で確認できた話

このブログでは、できれば文献で確認できることを書くように努力はしているが、それでも私がその方が分かりやすいと思ったら直観的な理解に基づいたこともよく書いている。そのうち最近の記事に書いた直観的な理解を論文で確認できた例があったので軽く触れ…

What happend to cognitive science?を読まずに反論論文だけを読む

少し前に認知科学について調べていたら、現在の認知科学を否定的に評価する論文google: R Núñez "What happend to cognitive science?"の要旨ページを見つけた。その要旨を読んで違和感があったが、無料で論文本文を読める訳でなかったせいもあり、そのまま…

自由エネルギー原理についての私的注釈(ただし解説ではない)

自由エネルギー原理は神経科学者や哲学者や心理学者などの様々な分野の学者によって議論されている注目の理論だ。日本でも紹介され始めて研究が進みつつある。ただそれらを見ていると自由エネルギー原理についての議論がいかに曖昧かが十分に理解されていな…

なぜかネットで手に入る英語による認知科学の教科書を見る

お世辞にも日本の認知科学を巡る状況は褒められた状況ではない。書籍に関しても、私がこのブログを書き始めた十年ちょっと前に比べればかなりマシになったとはいえ、全体的に見れば楽観視はできない。それでも一般向け読み物としての入門書はいくつかあって…

ベイジアンの合理的分析について考える

前回の記事でTauber et al."Bayesian models of cognition revisited"を読んでから、その著者らが批判したがっている最適アプローチなるものが気になって調べてみた。まず、実際に調べてみるとTenenbaumらの研究が合理的だとされる理由がはっきりとしてきた…

おかしなおかしな認知のベイジアンモデル批判

べイジアンについては引き続きいろいろ調べ続けているが、その中で『心理学評論』第61巻1号 特集「統計革命」を最近になって見つけた。この特集への感想として初めに思ったのは、思ったよりも特集名に合致した論文はそれほど多くないことだ。「心理学評論」…

カントから見る予測符号化と合理的ベイジアンの特徴

「The predictive processing paradigm has roots in Kant」を目にして間もないうちは、これを元にして予測符号化(predictive coding;predictive processingとも呼ばれる)と表象主義について記事を書こうと予定していたのだが、そもそもこのテーマ自体が広大…

4E認知は仲良しごっこのウソお友達グループだったのか?

認知科学では二十世紀の末頃(特に80年代から90年代まで)に、主流(特に古典的計算主義)に対抗する動きとして身体化論の流れが様々な形で起こった。それは二十一世紀にも受け継がれて、主要な概念であるembodied,embedded, extended, enactiveから頭文字を取っ…

拡張された心はどこに行くのか?

二十一世紀に入ってからの身体化論(流行りの言い方だと4e認知(embedded, extended, embodied, enactive))は、二十世紀までの古典的な身体化論に比べるとオリジナルな議論は少なくて、二十世紀までに出てきたのと同じテーマを繰り返し論じている傾向が強い。…

最近の身体化論のどこが問題なのか?

ここに身体化についての記事を書くのは構わないのだが、それをするには躊躇してしまう所もある。最近の欧米では身体化論(または4e認知)は流行り気味だが、日本ではその流行りはほとんど伝わっていない。最近の日本でも身体化論が流行ったかのような気配が生…

身体化論をテーマ別に分類してみる

私は身体化論に厳しいと書いたが、それは私が身体化論が嫌いな訳ではなく、むしろ元々は身体化論には好意的だったので一通りの知識は持っている。ただ翻訳されたノエ「知覚のなかの行為」を読んだ辺りから疑問を感じ始め、その後ネットで哲学者による身体化*…

社会的認知とか何か?を考えてみる

社会的認知(social cognition)についてはもう少しちゃんとここで書いたほうがいいのではないか?という思いは以前からあった。そう思ったきっかけのひとつとして、欧米の哲学者によるタイトルに社会的認知を称した論文を幾つか読んでいたら心の理論のことし…

還元的科学と非還元的人文学の対立の系譜を乗り越える

学生時代に認知科学に興味を持ってからかなり経つが、その間に認知科学への批判は色々と聞いてきたし、認知科学的な研究がかなり認められるようになった現在でもたまにまだ聞く。認知科学の良い所はそうした様々な批判も取り入れて研究に反映されていること…

身体化としての社会的プライミングとは何か?

近年になって身体性認知科学が流行っていると言われることがある。確かに文献の数の上ではその気配はあるが、その実態は怪しいところもある。特に身体性や身体化についての考え方が論者によって様々で定義がよく分からない上に、どこまでが科学的に意義のあ…

なぜ今の人工知能ブームは認知科学とあまり関係がないのか?

現在は三度目の人工知能ブームだとも言われている。それは深層学習と呼ばれる機械学習の発達による成果によるところが大きい。しかし、人工知能と関連が深い認知科学ではそうした人工知能ブームの影響はあまりない。人工知能そのものについては様々な良書が…

空虚な人工知能脅威論より恐ろしいこと

最近は人工知能ブームで様々な人工知能論が増えてきた。しかし、残念ながらその中には人工知能についての正しい知識の基づいていないろくでもない話も多い。あの有名なTED講演にさえそれがあったのを見つけたことがこの記事を書こうとした動機になった。 中…

神経科学者セスによる予測符号化についてのTED講演を見よう

脳が「意識された現実」という幻覚を作り出す仕組み TEDは学者や企業家をはじめとした様々な注目すべき人たちによる講演を動画として公開している有名な所だが、たまたま専用アプリが目に入ったので試しに見てみた。TED講演の存在は以前から知ってはいたが英…

人工知能ブームに乗った漫画から考えた

最近になって人工知能を扱った漫画は増えているが、この前はキンドルで「バディドッグ」が無料で試し読みできたので読んでみた。(残念ながら?)人工知能を扱った漫画の多くは現実の人工知能の進展とは無関係な純粋なSF的設定であることが多く、単なるフィクシ…

フリス「心をつくる」によってpredictive codingについてのモヤモヤをなくす

前回紹介した「心をつくる―脳が生みだす心の世界」は本当に今になって読んでよかったと思っている。これを読んでpredictive codingに関して感じていたモヤモヤがなくなってきた。それをいくつか挙げよう。 前々回に紹介した「予測的符号化・内受容感覚・感情…

predictive codingに関連したいくつかの疑問

ここ近年はpredictive codingについて調べることが多い。これはアンディ・クラーク経由で知ったのだが、科学者であれ哲学者であれ話題にする人は増えてきている印象がある。日本語の文献についてはいいものがなくて長らく困っていたのだが、やっと「予測的符…

そのモデルにとってベイジアンは道具なのか部品なのか?(前回の記事への補足)

やっぱりベイジアンは本で勉強した方がいいのかな?と思って、本屋に棚を改めて物色しに行った。そしたら、この前には見かけなかった書籍も見かけたりして収穫はあったのだが、同時にここで説明しておいた方がいいかなかな?という事も頭に浮かんできた。去…

認知のベイジアンモデルについて(フライング気味で)考えてみる

認知科学のベイジアンモデルはただいま勉強中で、直接に解説できるほどの理解には達していない。とはいえ、以前に比べればベイジアン・アプローチについて何となくのイメージは掴めるようになったので、地道ながら進歩はしていると思う。ただ、私がベイジア…

強化学習は教師あり学習/教師なし学習の対と同等の機械学習の分類なのか?

ネットで強化学習について調べていて、(私に判断できない技術的な説明は脇に置くと)いくつかのサイトにあった強化学習そのものについての説明を読んで違和感を感じてしまった。 強化学習そのものについての知識は、認知科学について勉強してコネクショニズム…

短期記憶の容量は七から四に書き換えられたのか?

少し前に、当時出版されたばかりの日本の心理学者の書いた一般向けの本を眺めていたら、短期記憶の容量として有名な7(±2)は今や間違っていて4(±1)が正しいと書いてあった(ネット上の論文では「前頭前野とワーキングメモリ」に同様の記述がある)。短期記…

トップダウン効果は本当に知覚を変えているのか?

モジュールのカプセル化に関する議論 哲学者が科学的成果に則って論文を書くことは近年になって増えてきたが、たまたま見つけた「Opening Up Vision:The Case Against Encapsulation」(PDF)もそんな論文の一つだった。内容はフォーダーのモジュール論の特徴…

「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」を読む

最近は気が向いて、ネットに上がっている認知科学関連の論文を読むことが多くなった。その中で、たまたまある学者が関わっていた論文を読んだら面白かった。それは「Neuroscience Needs Behavior:Correcting a Reductionist Bias」(pdf)だ。基本的に神経科学…

心の計算理論におけるマーの三つのレベルについて少しだけ

認知の計算モデルについて調べていていたら、日本のサイトでとてもよいリンク集サイトを見つけた。それは「私のブックマーク計算論的認知科学 第1版」であり、基本的にお勧めなのだが、実は最初にこれに目を通した時になんとなく違和感があった。それがはっ…

フォーダーとピシリンの共著「Minds without Meanings」(出版済み)の草稿を読む

ネットで調べ物をしていてある論文を読んでいたら、数年前にフォーダーがピシリンとの共著「Minds without Meanings」を出していたのを知ったのでさらに調べてみたら、その更に数年前に書かれたその本の草稿が見つかったので大雑把に目を通してみた。第二章…

法学者サンスティーンが参照する科学的心理学の成果を確認する

法学者サンスティーンは科学的心理学の成果に基づいた議論で著名な学者であるが、欧米での評価の割には日本ではそこまで知られていない学者でもある。 比較的最近の話題だと行動経済学者セイラーとの共著「ナッジ」(邦題「実践 行動経済学」)が有名があるが…

量子意思決定論に興奮してネットで調べてみる(そして匙を投げる)

私の数少ない愛読雑誌の日経サイエンスの最新号には、私のような認知科学好きにはヨダレのでるような記事が目白押しだったが、特に記事「パラドックスに合理あり | 日経サイエンス」には興奮してしまった。私ごときがその内容をうまく説明などできないので、…