メディア・リテラシーを発揮させてみる
身近な具体例の利用は数学学習の助けにならない http://www.yakuji.co.jp/entry6627.html
これは研究としては面白いと思うけど、記事に書かれている帰結には首をひねらざるを得ない。結論が飛躍気味なのはジャーナリズムの特色とはいえ、少し自分で検討してみた。
まず、実験の対象が大学生なので抽象的な思考法に慣れている可能性があまりに高い(小中学生相手でも同じ結果が出るかは怪しい)。第二に、(問題の難易度や類似度にもよるが)同じ構造の問題の間で類推(アナロジー)が起こる可能性が低めなことは既に実証的に分かっていることである(「問題解決の心理学」ISBN:4121007573)。それに関連して、抽象的な問題の後で具体的な問題をやるとその二つの問題の間に関連性があることが推測されやすい可能性もある。また、数学的思考法が(具体例による)余分な情報で阻害される可能性は確かにあるが、だからといって抽象的な例の方が応用が利くのかどうかはよく分からない。