2009年のジャン-ニコ賞はElizabeth Spelke

今年のジャン-ニコ賞が決まったようです(受賞講義そのものはまだ先ですが)。Elizabeth Spelkeは知覚や発達を研究する心理学者です。調べてみると、最近では性差の話題で有名なようです。科学能力*1の男女差について心理学者のピンカーと論争をしたこともあるようです(下記リンク参照)。この論争はハーバート大学学長のLawrence Summersの発言(女に科学なんてできねぇ!みたいなの)がきっかけで起こった論争だ。
ネット上にこの論争の記録があるのですが、私は面倒なのでスライドだけを見たのですが、それだけでも大体の内容は分かりましたので紹介します。ピンカーは様々な証拠から男女の科学能力の差は社会化や偏見だけで説明するのは無理があると言っています。ピンカーは男女には生まれたときから差があるという証拠(実験や調査)を示した。ひとつは人の興味には生まれつき性差があるという話で、赤ん坊の段階から男は物に女は人に興味を示す傾向があるとしています。もうひとつは、数学や科学に関連した能力には性差があるという話で、心の中でイメージを回転させる能力の性差などを例に挙げています。これに対してSpelkeは物や数に関連した能力に関して性差がないという証拠があることを挙げ、社会的な力が働いているを示した。例えばSpelkeは数える能力や空間定位の能力に性差がないことを挙げている。また、親の子供に対する評価や学者に対する評価に関する実験(社会的認知の実験)から、評価には相手の性によって偏りがあることを示した。ちなみに、心理学には女性の研究者が多いというのは余談だが、それってどっちの見解を支持した証拠だがよく考えると分からないじゃねぇか!
それにしても、去年に引き続き進化心理学的な主張(生得説)に批判的な研究者が受賞したところが面白い(ちなみにそれ以前には逆に進化心理学に好意的な研究者の受賞が目立っていた)。まぁいろいろ反省が働いているんだろうねぇ、と私は邪推を働かせてしまうが、しかし(性差問題以外の貢献を考慮しても)受賞にふさわしい研究者であることに変わりはない。

  • 参照リンク

Institut | Nicod
http://www.institutnicod.org/index.html
Elizabeth S. Spelke
http://www.wjh.harvard.edu/~lds/index.html?spelke.html
紹介したのは→Edge: THE SCIENCE OF GENDER AND SCIENCE[PINKER VS. SPELKE]
http://www.edge.org/3rd_culture/debate05/debate05_index.html
ハーバード大学の Larry Summers 学長の発言について
http://freshu.ist.hokudai.ac.jp/blog/?p=41
心の性差の始まりを考える
http://blog.livedoor.jp/gccpu/archives/45372.html

*1:初めは理系能力と書いたが、誤解されそうなので書き換えた