アマゾンのコメント付リストマニアと認知系言語研究の行く末

生成文法の入門書 http://www.amazon.co.jp/gp/richpub/listmania/fullview/R29X5RM1874SCN/ref=cm_lm_detail_ctr_full_2/249-6073413-7246757
認知言語学研究の必携書」 http://www.amazon.co.jp/gp/richpub/listmania/fullview/WMRVAY9Q1RGX/ref=cm_lm_detail_ctr_full_1/249-6073413-7246757
洋書の紹介ばっかりのリストですが、コメント読むだけでもおもしろいってことで。
ちょっと思うのだが、生成文法認知言語学には言語理論と言語思想との二つの側面があってお互いに関係しあいながら混ざり合っていると思う。例えば生成文法には、句構造規則を用いた標準理論(古い?)みたいな言語理論と、人間には普遍文法が備わっているという言語思想とが合わさっている。もちろん認知言語学でも、メタファー分析のような言語理論の側面と、文法の独立性は認めないという言語思想とはとりあえず分けて考えることも出来る。そう考えると、むかし言語心理研究に大きな影響を与え今は言語の脳科学で支持されているのは言語思想としての普遍文法であり、主に英語ばかりに妥当する生成文法の言語理論とは分けて考えた方がいいかもしれない(もちろん言語理論と言語思想はお互いに深い関係にはあるのですが)。それに比べて認知言語学は、様々な諸言語を扱った比較言語研究や言葉の史的変化を扱う歴史言語研究などにも普通に耐えられる言語理論の側面があり、最近は言語獲得研究にも影響を与えている言語思想の側面がある(これまた言語理論と言語思想はお互いに関係ありですが)。
正直言って、純粋な言語学理論として見れば認知言語学の方が優れていると思う。しかし、言語思想の側面を見ると、生成文法は進化論や脳科学などに幅広く影響を与えているが、認知言語学では心理学のトマセロがいるとはいえあとはあまり目立たない。ただしこれは逆に言うと認知言語学にはまだ学際研究の可能性がまだまだ残されているのかもしれないことにもなる。実際に以前紹介した人類学と認知言語学の関係*1と言うのもあるが、その関係はとうてい深められているとはいえない。しかし、知覚や思考などの領域がパッとしない現在、言語研究の領域は学際領域としての認知科学における最後の砦なのかもしれない(その後は専門分化の道まっしぐらだろうが)。

*1:お世辞にも出来のいい記事ではないのでリンクはしません。もっと良いのが書けるようになればいいのですが