さらなる追記

不毛な生得-経験論争にコメントをもらい、一度すぐにコメントを返したのですが後で考え直して削除。所詮は生物学に詳しくない私は、しょうがないのでgoogle:進化 究極要因で検索。どうももらったコメントでの理解はまずいらしいと分かった(私は脈はあるかなと思ったんだが)。

「ヒトのこころとは一体なにものか」。この問いに答えるためには、私たちの知性が「どのように」働いているかという"how"の問いかけだけなく、「なぜ」そのように働くのかという"why"の問いかけが必要です。さらにこれらの問いかけには、知性の発現である行動の直接的な原因(至近要因)を探るだけでなく、なぜ、どのように、そのような行動が進化してきたのかという進化上の原因(究極要因)を探る必要もあるでしょう。「われわれのこころはどのように進化してきたのか。そしてそれはなぜか」。このような問いかけに答えようとする学問が「比較認知科学」です。
「霊長類の知性の進化と発達」友永雅己 http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/official/open_campus_2004/subpages/Feb.26.Lect-1.pdf (PDF)

この発言は京大の霊長類研究所の先生のだから信用していいでしょう。比較認知科学も究極要因は関係あるようです(正直なところ「やっぱり」)。でも、比較認知科学進化心理学とで説明傾向に違いがあるのは確かなので、そのあたりは議論しても損はないと思うし、できれは比較認知科学進化心理学とをうまく結合できればより素晴らしいと思うのは私だけでしょうか?
ついでに、私が最初に書いた返答コメント(削除済み)をここに再録しておきます。

ドーキンスは有名な社会生物学者ですけど、彼はもともと(ノーベル賞をとった)動物行動学者ティンバーゲンの元にいましたし、同じく有名な社会生物学者ウィルソンは大々的な生態学実験をしたことがあります。そもそも私は優劣比較はしていません。社会生物学進化心理学とが一致するかは怪しいですが、進化心理学の本を読むと社会生物学的な話ばかりが出てきます。社会生物学はそれまでの研究成果を説明する理論的学問だと思います(もちろん理論からの予測を実証もするが)。ここで言いたいのは、説明傾向に偏りがあるのではないかということであり、優劣比較することではありません。
ところで、私の無知のせいだと思いますが、ヒトの心理的カニズムの究極要因ってなんでしょうか。比較認知科学も機能に言及してる気がするのですが。

冗長で言いたい事が分かりにくい。急いでコメントを書くと後悔することが多いです(この記事も急ぎだが)。このブログの記事はたいていしばらく寝かせてから公開してるんですけどね。

  • おまけ

ある生物種に特有な現象(反応・行動)を考えた場合、その現象を起こすことに直接関係する近接要因と、そのような現象を持つ種がなぜ進化の中で栄えたかに関する究極要因が考えられる。生物学の中で、この究極要因の解明をも目的とするのが集団の生物学である生態学である。
http://www.center.osaka-wu.ac.jp/~mishiha/classes.html

素人の私でさえこのように「種が」って書くのはまずいと思うのだが…

いずれも進化生物学の用語なのですが、ある現象の起きる原因を説明するときに、メカニズムに言及するのが至近要因による説明、その現象をもたらした淘汰圧に言及するのが究極要因による説明ということになります。たとえば、春になって小鳥が鳴き出したときに、それは日長が長くなって、雄性ホルモンの分泌が盛んになったからだ・・と言えば至近要因に言及したことになります。一方、日長がこれぐらいのときに繁殖を始めるのが一番繁殖成功率が高く適応度が高いからだ・・といえば究極要因に言及したことになります。ただし、究極要因の議論は結果から原因を類推しただけのトートロジーになりやすいので、繁殖成功についてのデータをとるなり、きちんと数理モデルを立てるなりといった手続きを踏むことが重要になります。
http://civitas.e.yamagata-u.ac.jp/EvoGame/newsletter/1999/990409.htm

後半の具体例はいいのだが、初めの定義は分かりにくいな。
ところで、アマゾンでの書評

「性淘汰」ようはレイプは子どもの養育にかかるコストの差によって、男女の互いを求める戦略に差が生じることに由来する(それがそのままレイプを進化論的に生み出すか、その性向の副産物かについての判断は保留)。つまりレイプを廃絶させる方向に淘汰圧を働かせれば解決策が見えてくるという指摘。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4862280064/249-6073413-7246757?v=glance&n=465392

人工的に淘汰圧を働かせるってこと?当の著作を読んでないとはいえ、本当の主張だとしたら引く。この書評の通りだとしたら、進化心理学の本としてはむしろ面汚しな気も(まともな進化心理学はこんなひどくはないでしょ!)。まぁ気にはなるが、私は面倒なので読む気がしない。
あと、社会的要因は単に至近要因でも究極要因でもないと思うんだが、そこら辺を議論する気のある人はいないのかね…別にいいけど